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はじめに
2007年3月に、海藻に疎いガイドのための海藻入門書「海中ガイドのための海藻ミニフィールドブック」を執筆しました松本ひろこです。この冊子は、財団法人WAVE助成金で開催した「海藻ワークショップ開催事業」での検証結果を含めて、海藻をガイディングに取り入れたいけど、どこからどう勉強したらよいかわからないという方のため、基礎知識から実際にガイドやブリーフィング、デブリーフィング時で使うことのできる「ネタ帖」として、フィールドへ持ち運びできるA5サイズで500部発行したものです。このようなガイドブックはJCUEとしては初の試みでしたが大変好評で、発行2ヶ月後で残数が50部を切っていると聞き、驚きと喜びでいっぱいです。
海藻に注目したきっかけ
今回、海藻に関する冊子を発行しましたが、私自身、海藻に注目したのは実は一年前からなので、まだまだ海藻は「初心者」です。海藻に注目するきっかけとなったのは「海辺の環境教育フォーラム」という海辺で環境教育活動をする人たちが年に一度集まるフォーラム。「海藻おしば(海藻を平らに広げて紙に張り乾燥させる手法)」をテーマに扱った発表が多く、海藻を名刺やカード、マイカップに貼るなど個人で愉しまれている方が多かったこと、そして、このフォーラムでお会いしたJCUE-A会員のケニーズハウス北川・三橋さんから、海藻も他の生き物と一緒でガイディングテーマの一つにし、お客様にも好評だという話を伺い、是非私も海藻について勉強しよう!と思い立ったのです。
しかし、海藻は海の中では良くみるものの、すべてが「ワカメの仲間」で済ませていました。見ても似たものが多くて名前がわからないし、最終的には顕微鏡で細胞を細かく見てみないと確定できないものもあると聞き、独学で勉強を始めるには限界がありました。そのため、このフォーラムで知り合った海藻の専門家、姫路市立水族館の相楽充紀学芸員に相談したところ、「それでは海藻にターゲットを絞った勉強会(ワークショップ)を開催しましょう」と急遽、助成金を申請し、昨年6月に初島でワークショップを開催しました。専門家と一緒に海藻の基礎知識を勉強し、一緒に海へ入って海藻が水深でどのように変わっていくかのレクチャーを海の中で受け、上がってきてから、さらに簡単な見分け方法や図鑑での探し方、暮らしに関わる海藻の話などを聞き、目からウロコがどばっと落ちてきました。
海藻も生き物と同じようにガイドしよう
海藻ワークショップを受講後は、実際にフィールドガイドでお客様に海藻も他の生き物と一緒に紹介しています。また、アドバンス講習でのエレクティブダイブでは「海藻」にターゲットを絞ってガイドもしています。ひとつひとつの解説は大変なので、最初に海藻と海草の違い、海藻にも3種に大別できること、1週間の食生活で海藻と出会わないことはまずないくらい、人間の食生活に海藻は馴染んでいるという話など、海藻のごくごく基本的な話をします。そして、ある程度の基礎知識と愉しむポイントを掴んで頂いてから、海の中でも解説をしています。「これも海藻?」(一見して海藻とは見えないもの)、「名は体を表す海藻」(見たままの名前がついているもの)、「古文書の海藻」(古事記や日本書紀に掲載されているもの)、「郷土料理の海藻」(地方で独自に食べられているもの)など、いろんなテーマに合わせて海藻を見ていただくと、海藻の和名を忘れていても「海藻で愉しんだ」ということは覚えて頂いているようです。ログブックに「海藻っていろんな種類や形があるって初めて気付きました!」というコメントを残して下さいます。
「インタープリテーションガイド」への挑戦
海藻をガイドするときに初心者ガイドに最もネックな「同定」。先輩諸氏には怒られるかもしれないのですが、私は「同定」にはこだわっていません。確かに、ご紹介する海藻やお客様の指した海藻をスレートにさらりと書くことのできる博学なガイドってすごいなぁ!とは思います。しかし、特にダイビング初心者のお客様ではエキジット後に「ホソバナミノハナがとてもきれいでしたね」とお話しても、それがどんな海藻であったかを覚えている人はほとんどいらっしゃらないのが現状です。そのことは海藻だけでなく、魚やウミウシでも同様のことだと思います。それよりは、ガイディングのときに和名を知らせず、その場で観察のポイントだけをお話し、デブリーフィングで図鑑などを使って説明する、或いはお客様自身で図鑑から探して頂くようにして、お客様の印象に観たもの感じたものをお土産にできることのほうが、実は大事なのではと思っています。
いろんなガイドスタイルはありますが、特にダイビング初心者に生き物を紹介する海中ガイドであれば、海の中の生物多様性を意識したガイディングを心掛けたい、ウミウシや魚類を紹介するだけではなく、海藻、貝類、ヒトデ、ソフトコーラル、ホヤ・・・など、その海の生き物達をまんべんなくご紹介し、海の生き物の躍動感、海の豊かさについて語れる「インタープリテーションガイド」になりたいと思っています。ですから、海藻のほかにも、例えばヤドカリ、ホヤなど、まだガイドブックとして世に出ていない生物についての勉強もどんどんしていきたいと思っています。
海藻は陸でも海でも愉しめる
海藻というのは、海の中で愉しむだけでなく、陸に上がってもいろんな愉しみ方があるのが特徴です。例えば海藻おしばもその一つですが、その他にも、ダイビング地はほとんどが海のそばですから、その地方独特の海藻食文化があります。わかめ、ひじき、あらめ、かじめ、ほんだわら、などなど・・・。それが食卓へ上るまでにどのような工程を経ているのか、季節は?何年ものがおいしい?など、舌で感じることも海藻で愉しむポイント。ただ、ダイビングだけのために来て、ドアtoポイントとなるのはもったいない。ダイビング地の食文化、漁業などを知ることも「ダイビング地を知る」きっかけになるでしょう。また、ダイビングをしなくても気軽に旅行で来て頂けるようになれば、ダイビング地の地域活性化につながりますし、何よりもその地に愛着を持って頂くことができるのではと思っています。
今後の展開・・・海藻ワークグループ
昨年から細々と活動していた海藻ワークグループは、今年は広く一般ダイバーにもNPO-JCUEの活動を知って頂くために、敢えて、1年間は会員外の方でも参加できるようにしています。海藻をどうガイディングに取り入れたらいいのだろう?何をどう紹介したらよいのだろう?愉しむポイントは何?そのような疑問をワークグループで話し合ったり検証したりしながら、ガイドの幅を広げようという目的で設立します。もちろん、海藻を基本から勉強してみたいという一般ダイバーやガイドも参加可能です。興味のある方は是非参加ください。
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